今回は、高知県の紫苑正樹さんにお話をうかがいました。正木紫苑さん 家族を通じて、幼い頃から教職に就いていた彼女は、自らもこの道を志すことにした。しかし、ある程度の経験を積んだ後、もっと母国のために直接貢献したいと考えるようになった。現在では、高知県を積極的に仕事を通じてPRし、海外からの観光客に興味を持ってもらえるような工夫をしている。彼女の考える日本の学校制度や、生徒や保護者への対応について少しお話を伺いました。しかし、高知県について、どんな特徴があるのか、今後に期待することは何なのか。
このインタビューのドイツ語版は、以下の記事でご覧いただけます。
正木さん、こんにちは。まず最初に、ご自身のことを少しお聞かせいただきたいと思います。あなたは誰ですか?高知県でお育ちになり、高知県にお住まいであることの魅力を教えてください。
私の名前は正木潮音(まさき しおん)です。中学生まで高知県で生まれ育ち、高校から家族と離れて大阪で高校生活を過ごしました。高知県にいる間はかなりの田舎度合いにうんざりしていましたが、大阪で生活をして初めて高知県の自然の偉大さを認識し、そこから故郷である高知に強い愛着を持つようになりました。
学業を終えた後、小学校の先生として働き始めたとお聞きしましたが、どのような経緯があったのでしょうか。教師として長く働いていないにもかかわらず、です。教師になろうと思ったきっかけは?私は、この重要な仕事をしようと決心した人に最大限の敬意を表します。
両親がずっと教師として働いており、小さいころから「教員」という仕事は私にとってとても身近なものでした。また個人的に、中学生という時期は思春期によりいろんな感情を覚え、一番心が成長する期間だと思います。その不安定でもある時期の生徒を支えたいという思いもあったことが、教師をやってみようと思った経緯です。
師時代を振り返って、まず思い浮かぶのはどんなことですか?この間、特に好きだったこと、最終的に職業を変えた理由は何ですか?
ずっと反抗していた生徒が、私の勤務最終日に泣きながら「ありがとうございました」と言いに来てくれたことに感動しやりがいを感じました。教員時代は生徒との関係で悩むこともたくさんありましたが、私が今までやってきたことは間違いではなかったのかもと思えた瞬間でした。転職した理由ですが、日本の教育現場の働きすぎ問題を直に実感したからです。本業である、「教える」という仕事以外にも、親の対応や事務作業、部活動など他にも数えきれないほどの様々な仕事があり、現場の先生は日々多大な業務に追われていました。朝早くから出勤し夜遅くまで仕事で残る姿を見て、この仕事をこれから一生続けていくのは難しいと感じ、転職を決意しました。
日本では小学校を卒業すると、制服を着用する習慣があります。 これらの制服は、海外では特に肯定的にとらえられているようですが、あなたはどのようにお考えですか?また、ジェンダーフリーの制服の問題が何度も出てきますが、ジェンダーフリーとはどういうことか、ズボンやスカートは生徒が自分で決める方がいいのではないか、という疑問があります。女の子がズボンを履きたいのか、男の子がスカートを履きたいのか。
個人的には朝悩まずに支度を整えられるため、制服は便利だと思います。只、男子はズボン、女子はスカートという古くからの概念が根強く残っているため、LGBTの生徒が苦しむ要因の一つになっていることも事実です。最近では、生徒が自由にスカートやズボンを選べるように多様性を意識した制服も広がりつつありますが、十分ではありません。また、セバスチャンさんがおっしゃっていたように、女子はズボンを選びやすいが、男子がスカートを着用することは本人の勇気が相当必要であり、周りの視線も冷たく感じるかもしれません。LGBTの生徒が自由に選べるようになるには、まだ時間がかかるかと思います。
世界の多くの国々で、生徒が教師に対して本当の意味で尊敬の念を抱かなくなっているように感じられます。日本の状況をどのように見ているか、また、なぜそのように考えているか。個人的にはどのようにお考えですか?
何十年か前までは、日本では先生がとても尊敬されていました。親も先生に協力的で、そのせいか悪いことですが、体罰もよく起こっていました。ただ、今は親が変わり教師が悪いことをした生徒に怒っても「なぜうちの子どもを怒るんだ!うちの子は悪くない」と自分の子どもの非を認めない親が増えたように感じます。昔は教師に絶対的権力がありましたが、今は多様性を認める時代。どこからどこまでを多様性と称して認めるべきか線引きが曖昧な点も関係して、教師が生徒にあまり怒れなくなっているとも感じました。またこれは私個人の見解ではありますが、小学生・中学生の若い年代からスマートフォンを持ちいろんな情報をすぐに得ることができるようになって、悪い意味で子どもが賢くなったと思います。そのようなことが影響して、だんだん生徒にとって教師が尊敬される人でなくなってきているのではないかと感じます(すみません、うまくまとめられませんでした。)
現在のお仕事は、高知県の美しさや多様性を世界に発信することですね。 あるプロジェクトで2日間ご一緒させていただきましたが、いろいろとお話させていただきました。高知県の魅力は何だと思いますか?
高知県の魅力はやはり圧倒的な自然だと思います。山、川、海、美味しい食などが豊富で、素朴な田舎時間を楽しめると思います。都会は何もかもが揃っていて不自由のない生活ができますが、高知県は、電車の本数しかり不便なことがたくさんあります。そんな不便を楽しむことができる人にとっては、高知は素敵な場所なのではないかなと思います。
現在、高知県は海外からの観光客にどの程度知られているのでしょうか?海外からのお客さまも多いのでしょうか?また、そうでないとしたら、高知にもっと人を呼ぶにはどうしたらいいと思いますか?
コロナ禍で海外からのお客様はほぼ高知県には来ていません。コロナ前までは、台湾、香港、韓国、シンガポール、中国あたりが高知県に良く来高していました。ただ、高知県に訪れる外国人は、既に東京や大阪、京都などの主要都市を訪問した日本旅行のリピーターで、もっと日本の地方に行ってみたいと思う方がほとんどです。高知に外国人を呼ぶにはやはり、SNSやイベントなどで積極的に発信していくことや、実際に高知旅行をしてくださった方が周りの方に「高知良かったよ!」と宣伝してくれるようにしっかりと県内の受け入れ態勢を強化していくことが大切だと思います。
日本食は世界的に有名ですが、高知には素晴らしい名物料理がたくさんあることを、私は実際に体験しています。高知の食について少しお聞かせください。特に好きな料理と、高知に来たらぜひ食べてほしい料理を教えてください。
高知には美味しい食がたくさんありますが、「カツオのタタキ」がとくに有名です。県外のものとは違って臭みがなく、身が分厚いので、お肉を食べているような満足感があります。県外ではポン酢に似たタレをつけて食べますが、高知県では天日塩をつけて食べる「塩タタキ」がとても人気です。新鮮だからこそ、塩をつけるだけで絶品な味になります。又、「田舎寿司」もとてもお勧めです。お魚のお寿司ではなく、山菜(しいたけ、四方竹、みょうが、リュウキュウ)を使用し、お米にはゆず酢を加えます。(高知県はゆずの生産も日本一です)動物性のものを一切使用していないので、ベジタリアンやヴィーガンの方でも楽しめるお寿司です。帽子パンもおすすめです!(笑)
高知に住む人たちの典型的な姿とは?日本の他の地域と比較して、何か突出した特徴はありますか?
高知の人は、いい意味でおせっかいな人が多く、大らかな印象があります。高知県東部・中部で話される土佐弁は、県外の人が聞くとまるで喧嘩をしているように聞こえるようですが、関西弁に似た面白い方言を使っています。又、お酒が強い人も多く(もちろん得意でない人もたくさんいます)、飲み会では大量のお酒を飲みます。
最後に、一言ずつお願いします。高知県の未来、そして日本全体の未来に期待することは何でしょうか。あるいは、読者へのお勧めがあれば教えてください。
高知県は四国の最南端にあり、アクセスがしにくい場所に位置しています。そのため、日本人の中でも「高知に行ったことがない」という人はたくさんいます。そのため、高知県は秘境の地だと個人的に思っています(笑) ただ、一度来て頂くと雄大な自然があなたを迎えてくれ、あなたの心を癒してくれるに違いありません。日本に興味のある外国の方にたくさん来て頂くために、私は今の仕事を通して高知県の良さを発信し、高知の良さを知ってほしいと思っています。そして、いつか外国の方にとって「日本旅行をするなら高知に行きたい!」と、旅の目的地として高知の名前が挙がるようになれば本望です。
お忙しい中、質問にお答えいただき、読者を代表してお礼申し上げます。この小さなインタビューが、読者の皆さんにとって、教職について興味を持つだけでなく、自ら美しい高知県を訪れるきっかけになればと、心から願っています。
高知県についてもっと知りたい方は、正木さんのお姉さんのInstagramアカウントで、高知県の観光についていろいろと発信されているので、ぜひチェックしてみてください。